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スタイルと内容の剥離とその効果~『ドン・チャック物語』の反骨精神~ [テレビ]

 東京ドームシティアトラクションズに行ったことがある人なら、一度は目にしたであろうドン・チャック。ビーバーをモデルにしたあのマスコットキャラである。

 このキャラクターを主役に据えたアニメが昔放送されていた。1970年代後半のこと、東京ドームシティアトラクションズの前身にあたる後楽園ゆうえんちが企画・協賛して『ドン・チャック物語』が制作された。当時からすでにマスコットキャラクターとして活躍していたドン・チャックとその仲間達の交流を描いた心温まるストーリー……に、したかったのだと思う。

 現実は非情だった。ナック(現ICHI)との共同制作による『ドン・チャック物語』は、子供向けアニメの皮を被った結構えげつない何かに成り果てていた。

 ザワザワ森に住むビーバーの男の子ドン・チャックは、父のドン・アリストテレス(ドンが名字らしい)との二人暮らし。母はすでに他界している設定で、アニメ第一話から早速母親に会いたいなどとこぼしている。それでいいのかシナリオライター。それでよかったのか後楽園ゆうえんち。

 記念すべき第一話のストーリーラインはよりによってこれが軸になっている。この後、ザワザワ森に住む悪ガキのラッパオオカミと、その子分のキツネとタヌキ(名前を失念した)が登場する。森の外にはお菓子の城があるなどという話を信じたキツネが森の外に出て行く算段を考えるのだが、あろうことかチャックに森の外に母がいるから一緒に会いに行こうなどと吹きこんでイカダを作らせ川を下るという方策を採る。ご丁寧に途中でチャックをイカダから下ろし、母親の話は嘘だったと暴露する外道ぶり。

 ここまでで分かる通り、中々重いテーマを扱う話がところどころに見られる。ある回では水車で小麦粉を挽くおじいさんと、蒸気機関で早く大量に粉ひきができる製粉所との対立が描かれたり、またある回では老いらくの恋と高齢者の家庭及び社会的な立ち位置に踏み込んだ話が描かれたりと、扱われるテーマは多岐にわたる。

 先述の悪ガキ達の描写もすさまじい。自分たちの欲求に正直に動いた結果平気で人を騙し、盗み、陥れるという、悪ガキというには度を超している描写が目立つ。ともすればNHK教育番組で見るようなキャラクターデザインでありながらその悪行は並の悪党顔負け、それでいて(後楽園ゆうえんち最後の良心か)懲らしめられる描写はあれど必要以上に痛めつけられることはなく、窮地になればチャックはいつも彼らを助けにゆく。それでいいのかドン・チャック。それでいいのかザワザワ森。

 話の内容もさることながら、注目したいのはこれが全てNHK教育番組に出てきてもおかしくないようなキャラクターによって繰り広げられている点である。リアルタッチの作画のアニメや映画ででもやるようなこれらのストーリーは全て、可愛らしい動物たちの間での出来事なのである。
 これは敢えてのことだと思う。ファンシーな世界観やキャラクターはあくまで物語のスタイルである。それを見て可愛らしい物語を予想する視聴者に毒のある物語を突きつけることで、ギャップによる心理的効果を狙ったのであろう。同様の例は最近だと『魔法少女まどか☆マギカ』の成功が記憶に新しい。

 反骨精神である。故やなせたかし氏が子供向けだからといって安直なものではいけないとばかりに自身の哲学を盛り込んだ物語を作り続け、やがて『アンパンマン』を生み出したように、これは安直な子供向けアニメへの反抗なのである。事実、脚本家は実績のある人物で、物語自体に大きな破綻はあまり見られない。他にもアニメの脚本を多く手がけた人物なので、このキャラデザに合った話が書けなかったということはないはずである。

 安直な“スタイル”と、そこから安直に導き出されるストーリー。それをあえて廃し、重みのあるストーリーをほんわかした世界観で描くという決断は、今の時代にあって再び顧みられるべきよき先例なのかもしれない。後楽園ゆうえんち的にどうだったのか知るよしはないが、シリーズ後半から制作の名義がナック単独になっていたという事実が何かを語っているような気がしてならない。







posted by nino-sanjo at nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(10) 
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ひよこ

不運なライオン様 初めまして、ひよこと申します。私なりに『ドン・チャック物語』を解釈や研究をしている者です。社会学、地球物理学、地政学、学術史、植物、食糧、各種素材などの視点で(少々オーバーかな)。

現在、キッズステーションがYouTubeでネット配信をしています。現在1話と、76話~80話まで。
by ひよこ (2016-10-27 00:05) 

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